さびにくいという特性を生かして私たち実の周りではキッチンやスプーン、ピアス、鍋など様々な場所で使われてるステンレス。鉄鋼にCrやNiを加えることにより、さびにくい性質を持っています。
ステンレスってなんの金属?
ステンレスとは、ISO/TSSによると炭素(C)1.2%以下でクロム(Cr)10.5%以上含有する合金鋼のことをステンレスといいます。
ステンレスはなぜさびにくい?
クロム酸化物から構成される強固な酸化被膜が表面を覆っており、深層にあるクロム鉄合金が酸素と結びつく(錆びる)のを防いでいるため錆びにくくなっています。
ステンレスの分類は?
ステンレスはJIS鋼材規格では、約60種類規定されており、200番台・300番台・400番台に分けられます。
ステンレスに含まれるクロムやMo、Nの役割
ステンレスにおけるCrは耐食性を上げる効果があり、MoやNは耐孔食性を上げる効果があります。
ステンレス鋼に発生する腐食の種類
ステンレスは炭素鋼に比べて耐食性がありますが、ステンレス鋼の周りの環境により腐食が発生します。ステンレスに発生する腐食で代表的なものには次のようなものがあります。
ステンレスの孔食
溶存酸素と塩化物イオンにより、不働態被膜が破壊されることによって起きる。
すき間腐食
フランジ面の隙間や、水の流動性が著しくない場所では酸素が供給されなくなる。このことによって不働態被膜が不安定となり腐食が発生する。
上記動画では、フランジのボルトとの隙間部やフランジ同士が触れあう表面にすき間腐食が起きている様子をみることができます。(動画5秒付近~)
粒界腐食
650度付近に加熱されると結晶粒界に沿ってクロム炭化物が析出するため、不動態を維持できるほどのCr量が不足する。このことにより、ステンレスの結晶粒界に沿って腐食する。
応力腐食割れ
オーステナイト系ステンレス鋼が引張応力や溶接残留応力によりひび割れを伴いながら腐食する現象。
材料ー環境ー応力の三要素がそろった時に応力腐食割れが起きるため、これらの要素をなるべく排除するような条件下にするような対策を行う必要がある。
・環境要因の低減→塩化物濃度の低下や溶存酸素の除去
・応力の緩和→残留応力を極力除去する等
微生物腐食
微生物腐食とは微生物により腐食が進行する現象。配管の場合、特に溶接部で発生するが、微生物腐食と特定することが難しい。このため、腐食原因が微生物によるものと特定されずに単なる溶接欠陥として処理されてしまうこともある。
微生物腐食の防止対策としては、次のようなものがある。
・Cr、Moを多く含むステンレス鋼を用いる(SUS309, 310, 316, 317)
・溶接施工後は酸洗処理を行いスケール除去を行う
ステンレスは海水に弱い?
錆びに強いといわれるステンレスですが、海水(塩化物イオン)がある環境では腐食が発生します。
ステンレス鋼は塩化物イオンと溶存酸素が共存していると不働態被膜が破壊されます。SUS304などの一般的なステンレスは、塩化物イオンにより短期間で点状に変色します。孔食が発生する電位が高いほど塩化物による破壊が起こりにくいため、塩分がある環境下では高クロムが含有されているSUS329J4Lなどの高級ステンレスを使用する必要があります。
海水等の塩化物イオン条件下でのステンレス腐食の様子を表したアニメーションです。
通常、ステンレスは表面を酸化クロム層でできた不動態被膜で守っています。しかし、上記ビデオのように海水などの塩化物イオンが存在する環境下では、不動態被膜中のCrと塩化物イオンが結合しCrCl3となって溶出していきます(ビデオ9秒付近)。
不動態被膜が壊された後、Cl⁻やClO⁻が深層に到達し、さび(Fe2O3)が析出するようになります(ビデオ32秒付近)
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